山本文緒はかなり好きではまっていた。

 毒のある、冷めた語り口が好き。
 時々、的を射すぎていて、胃が痛くなるくらいだ。

 「そうやって、いつも人を馬鹿にしているから、皆に嫌われるのよ!」

 サユリさんの天より高いプライドは、足元のミミズ以下だと思っていた女に砕かれたのだ。それで彼女は錯乱するほど私を憎んだのだ。

 どちらも、自分のことを見抜かれているようでぞっとした。

 確かに私は人を馬鹿にしがちだ。優越感とは、劣等感と表裏一体だというのを読んだことがある。優越感の塊だった私が、劣等感の塊に転落したのは16〜17歳のときだ。
 単に、今まで自分の生きてきた世界が狭すぎて、自分のレベルが全く分かっていなかっただけなのだが、それでもショックだった。阿呆にもほどがある。

 天より高いプライド、か。足元のミミズ以下だと思っていた女に砕かれた私のプライド。錯乱なのか激しい嫉妬なのか、今となってはよく分からない。

 そもそも、そのプライドに見合った力は全くなかった。それだけの努力もできていなかった。現実的に考えることが全くできていなかった。それなのに、できると思い込んでいた。現実逃避だ。妄想だ。
 このおかしさは、やはり錯乱と言って差し支えないのだろうか。

 この本のサユリという女性は、その感情を、憎しみの対象である私に直接ぶつけた。
 私は、その攻撃的な気持ちが内へ内へと向かった。

 そういうのが積もり積もって今の状態。

 もはや私は壊れものなのだ。

 言いたいことを言わないと、おかしくなってしまうよ。

 そうやって忠告してくれた、職場の先輩。

 もう、手遅れだと思います。

 完治するのが難しくて、手術して一時治ったかのようにみえても、またすぐ、激しくストレスを溜めてしまって逆戻り。

 この病気をしていることによって、私は歪んだ特権意識をもっているのだろう。

 「他の人とは違う」という、間違った特権意識を。

 それによって、正攻法では叶わない、人の注目を集めたいと思っているのかもしれない。
 この考え方を改めない限り、改善は難しそうだ。
 
 医学的な根拠なんてまるっきり何もないが、そう思う。
 
 村山由佳の本では、一番好き。

 ずっと、自分をプライドの高い人間だと思っていた。中身がそのプライドに見合っているかどうかは別にしても、とにかくプライドを傷付けられることが嫌いなことだけは確かだった。

山の音

2004年4月20日 読書
 「情を秘めた女」

 主人公菊子は、そのような女らしい。

 「らしい」というのは、雑誌で紹介されていたのを読んだだけだから。

 大学教授の解説がまるまる1ページ載っていて、読んでみたいと思った。
 もともと川端は好きなほうだ。熱さや激しさというより、淡々としているような、全体に流れる空気感が。

 いったん、その教授の考え方に沿って読んでみて、自分なりの考えも持てたらいい。
 

負け犬の遠吠え

2004年4月14日 読書
 雑誌の特集で紹介されているのを読んだとき、ものすごくショックを受けてしまったこの本。

 30代で結婚していない人は、負け犬。

 女性が社会進出しているこの時代に、こういうことを言ってしまうんだ、というのが一つ。

 もう一つは、負け犬の条件を読んでいて、自分に当てはまるものがあった。とても意外な項目で。

 それは、古典芸能が趣味、という項目。

 趣味というほどのめり込んでいるわけではないが、何度か見に行ったことがあり、意外に面白いと思っている私。

 周りはもちろん、年配の方が多い。
 もしくは、通ぶってる若者がちらほら、といったところだろうか。

 この本にも書いてあったが、こういう本を手にとって読んでしまうということが、負け犬(予備軍)なんだろうな。

 と、とにかく、こんな本を紹介しておきながら、私は結婚についてはあまり考えたくない。

 気になるのは確かなのだが。

 断っておきますが、私は20代ですよ。

蹴りたい背中

2004年4月8日 読書
 こんなに、高校生当時自分が感じていたことを表現した小説は、今までになかった気がする。

 「インストール」はあまり好きになれなかったが、これはいい。

 私は自分自身に対し、声に感情が乗らないな、とよく思っているのだが、それを
「声に色が乗る」
という表現をしていて、なるほど、と思った。
 過去の日記を読んでいたら、この本の中の言葉を引用しているところがあったので、紹介します。

  内容(「BOOK」データベースより)
果歩と静枝は高校までずっと同じ女子校だった。ふと気づくといつも一緒だった。お互いを知りすぎてもいた。30歳目前のいまでも、二人の友情に変わりはない。傷が癒えない果歩の失恋に静枝は心を痛め、静枝の不倫に果歩はどこか釈然としない。まるで自分のことのように。果歩を無邪気に慕う中野くんも輪に加わり、二人の関係にも緩やかな変化が兆しはじめる…。

 「大切なのは、何も考えないこと」

 傷が癒えず、甘いものが食べられない彼女。失恋したとき、スウィートホリック(甘いもの中毒。お菓子ばかりを尋常じゃないほど食べる)になったことのある、主人公果歩の言葉。

 同じくトラウマのある私にも、この言葉は痛いほど身にしみた。

 暇つぶしに買った本で、しかも一回読んだだけでは意味がよく理解できなくて面白くなかったのだが、今では大切にしている。
 好きですね、星の王子さま。

 昔は、難しすぎて意味が分からなかったけど、今は少しずつ分かってきた。

 線の細い挿絵も、すごく好き。

 便箋やメモ帳、ポーチなど、グッズも少し持っている。

地獄変

2004年2月26日 読書
ISBN:4087520110 文庫 芥川 龍之介 集英社 ¥343

 自分の芸術のために、自分の家と娘を焼き殺し、地獄の絵を描く、という芸術家魂に、アブナイとは思いつつも惹かれる話。

スキップ

2004年2月19日 読書
ISBN:4101373213 文庫 北村 薫 新潮社 ¥743  

 北村薫の本だと、「ターン」のほうが有名で人気もあると思うけど、私はこちらのほうが好き。

 主人公が、ある日突然、10代から40代になってしまった。40代になった彼女は高校の国語教師をしていて、中身は10代のまま、そのときを生きていくという筋である。

 私が高校国語の免許をもっているからかもしれないが、生徒との接し方などにも興味を抱いた。著者も元国語教師だから、話がリアルなのだ。

 
ISBN:4101278229 文庫 おーなり 由子 新潮社 ¥590

 「いかりの正体は、かなしみなんだって」
 「ことばというのは
  そうかんたんに 伝わらない
  伝わる時には
  ことばがなくても
  伝わる

  だから 心せよ」

 思わずはっとする。
 
 文章を読まなくても、パステルカラーの挿絵を眺めているだけで、あったかい幸せな気分になれる。

 ただきれいなだけでなく、大切な何かにきっと出会える、そんな一冊だ。
ISBN:4041171032 文庫 佐々木 幹郎 角川書店 ¥440

 「冬の歌」「春日狂想」が好き。その中でも、お気に入りの部分を抜粋します。

 かくて夜は更け夜は深まつて
 犬のみ覚めたる冬の夜は
 影と煙草と僕と犬
 えもいわれぬカクテールです
(「冬の夜」)

 全て人は寝静まり、犬と自分のみが目覚めている。世の中から取り残されている、という描写。(教授曰く)

 
 ではみなさん、
 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
 テムポ正しく、握手をしませう。

 つまり、我等に欠けているものは、
 実直なんぞと心得まして。

 ハイ、ではみなさん、ハイ、御一緒にー
 テムポ正しく握手をしませう。 
(「春日狂想」)

 これは最後の部分だが、全体を通して読むと、思わずくすっと笑ってしまうような描写がたくさんある。

 極度の悲しみを経験すると(中也の場合は、息子を失ったこと)、悲しみ、絶望を突き抜けた境地になるらしい。
 明るさ、軽み、ユーモア。

 この心境が理解できるほどの悲しみを経験したことはないはずだが、それでも少しは共感し、自分を重ね合わせてしまう。

 みなさんにも、自由な読み方をして中也の詩を味わってもらえたら、と思う。
 

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