「にほひ」

　精神科医が講師として、講義を担当している。
　50代くらいのおじさまなのだが、なぜか今日、かっこいいと思ってしまった。
　多分、服装のせい。

　全身黒、の服装に弱いのです。
　一年の時に講義で聞いたことだが、黒や白で固めると、「にほひ」(色気ってことです)が出るらしい。

　「にほひ」(匂ひ、薫ひ)。
　源氏物語宇治十帖の、匂宮と薫の名前は、ここからきているらしい。

　この方がスーパーで、お孫さんらしき人に
　「おじいちゃ〜ん！！」
と呼ばれていた、という話を聞いて、思わず笑ってしまった。
　いかにも、お孫さんに優しいおじいさん、って感じするもの。

　そういえば、私が入院してたときの担当のH先生にすごく憧れた時期があった。私が18歳、先生が36歳だったかな。弱ってるときって、頼りたくなるものだし。
　本当に色々すごい人で、しかもすごく優しい人だった。
　今は、アメリカで大学の講師をしていて、来年、帰ってくる。

　入院したの、四年前か。本当に色々あったな。その頃の日記を読んでてそう思った。
　
　誕生日に入院してへこんでいたので、H先生がわざわざ、ケーキを買ってきてくれて、ナースステーションで看護士さんたちと一緒に食べた。
　本当にうれしかった。

　そのとき、H先生のお子さんが来ていて、淡い黄色のワイシャツを着た先生が、お子さんをあやしている姿がすっごく幸せそうで、今でも目に焼きついている。

　黄色と、左手薬指に光る指輪と、先生の笑顔。


　みっふぃーさん、リンクさせていただきました。